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慢性肝疾患の診断、病状を一回の血液検査で明らかにする方法の開発

大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学の村上善基病院講師らのグループは、血液中のマイクロRNAと呼ばれる遺伝子を測定することで、慢性肝疾患の病因や病気の進み具合を診断する方法を開発しました。今まで慢性肝臓病の病気の種類や進行度は血液検査、画像検査、病理組織検査を組み合わせて判定していましたが、この方法を使うとそれらをたった一回の血液検査で診断することができます。本研究の成果は10月31日発行の米オンライン科学誌PLOS ONEに掲載されます。

発表雑誌

PLOS ONE
http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0048366

■論文名
Comprehensive miRNA expression analysis in peripheral blood can diagnose the chronic liver disease.
『末梢血中のマイクロRNAの包括的な解析は慢性肝疾患の診断に有用である。』

研究の背景

ヒトにはマイクロRNAと呼ばれる小さなRNAが存在しています。最近までその役割はよくわかっていませんでしたが、マイクロRNAの増減が病気と関わっていることが明らかになってきました。このマイクロRNAは主に細胞の中に存在していますが、血液の中ではエクソソームという直径100 nm(ナノメートル、1ミリメートルの100万分の1)程度の小さな粒子の中に存在しています。今回、慢性肝臓病の患者さんのエクソソームの中に含まれるマイクロRNAを測定し、病気の診断とその程度を評価する方法を開発しました。

研究の概要

慢性肝臓病の代表的な原因は肝炎ウイルスです。日本でB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに感染している人はそれぞれ約150万人、約300万人と推定されています。慢性肝臓病は自覚症状が現れることが少ないですが、放置すると10-20年の経過で肝硬変になり、さらに肝癌が発生します。そのため、肝臓病の診断はとても重要です。現状の肝疾患の診断では、血液検査で肝臓が壊れていることがわかると、より精密な血液検査、腹部エコーなどでその原因を調べます。さらに肝生検を行い病理組織学的に病気の種類を診断し進行度を評価しますので、手間がかかり、また、体を傷つけてしまいます。今回開発した我々の方法では、エクソソームの中に含まれる数種類のマイクロRNAを測定するだけで、肝疾患のない人、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を分類でき、さらに、病気の進み具合も評価できます。この検査方法は簡便で、繰り返し行うことができるため、病気の診断だけではなく、治療効果の判定などにも応用できます。

今後の展開

平成25年度中に解析数を増やし、より少ないマイクロRNAの情報で診断の精度を高め、平成27年度に高度先進医療として認可されることを目指しています。

?図1 エクソソーム中のマイクロRNAが診断材料として有用な理由と解析の簡単な流れ

20121101.jpg

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表1 マイクロRNAを使った肝疾患診断法の実際

結果
予想 B型慢性肝炎 C型慢性肝炎 NASH 肝疾患のない患者
B型慢性肝炎 2 0 1 2
C型慢性肝炎 0 64 1 3
NASH 1 0 9 3
肝疾患のない患者 1 0 1 16

マイクロRNAの発現結果に基づいて“ひとつだけ別に取り出す交差確認 (Leave-one-out Cross-Validation)”と呼ばれる統計的手法で診断を予測した結果を示します。この方法で行った診断の正確性(accuracy)は88.35%です。